政治と経済。(第3翼)

 目下、現在問題となっている「道路特定財源」の代名詞的存在の通称「ガソリン税」。
 これは租税特別措置法という30年以上昔にできた法律をよりどころとしている税です。本則税率の約2倍の税率が現在適用されています。
 道路特定財源といわれるゆえんは、その根拠法である昭和28年に成立した「道路整備費の財源等に関する臨時措置法(第3条第1項)」と「地方道路税法(第1条)」「地方道路譲与税法(第8条)」によります。それらの税率を構成するのは本則税率「揮発油税法(第9条)と地方道路税法(第4条)」、暫定税率「租税特別措置法(第89条第2項)」の3法です。名前の通り、揮発油税法は国税、地方道路税法は地方税でそれぞれ目的税となっています。
 現在の道路整備にはこれらの道路特定財源が使われ整備されています。

 現在議論されている背景としては、政治的な問題だけでなく、原油価格と外国為替の影響による燃料高騰によるところに影響され、それから小売にまで影響を与えるとともに、消費生活に重たくのしかかっているところによります。
 外国為替の影響は別項「ガソリン。」で以前でれたとおり、「石油1バレルが1ドル(ドルエン120円と仮定)上昇すると、1リットル当たり0.754円の上昇となります。また、1ドル当たり1円円安(0.8%上昇)になった場合、1リットル当たり0.044円の上昇」ということです。
 今回の租税特別措置法の廃止が実現すると国と地方合わせて2兆6000億円の税収減となります。これは表向き減税ですが、本来の税率に戻るだけの話です。一リットルあたり25円近くも下がるわけですから、経済に与えるインパクトは大きいですが、税収に与える影響も見過ごせない状況になります。
 道路整備を特定財源に依存する地方自治体や建設業界にとっては大きく死活問題となります。何せ予算が前年比50%以上カットとなるわけですから。今まで護送船団方式だった業界を見直すにはよい機会だと思います。
 地方と建設業界にとってはマイナスになりますが、自動車業界については若干プラスといえそうですが、個人的には、自動車取得税と重量税を上げてほしいと思うのです。
 さて、道路整備については受益者負担で、いままで一定の金額を使えていたということ自体が問題だと思います。これは経済原則に当たっては、価格の高止まりを意味することになります。ならば、市場原理と競争を促進するためにも、何らかの対策が必要であり、その一つとして道路特定財源の廃止は適当だと考えます。
 ただ、「道路特定財源」だけみていればそれでよいのですが、2兆6000億円で成り立っていた業界とそれらが与える日本経済への影響を考えると、おいそれと「廃止」とはいえません。むしろ、「道路特定財源」を廃止し一般財源とした方が税制策にとっても歳入にとってもよいのではないかと思います。
 当然ながら、予算が半分となれば、それに依存していた業者の数は半分近くなり、廃業となった場合の影響度を検討しておかなければ、今度は改正建設基準法不況の比ではすまなくなります。わかりきった影響だけを考えると、失業者数の増加と、それに伴う税金の減収、失業手当の増加など。
 あくまで個人的にはこの道路特定財源の廃止は歓迎なのですが、どうも経済に与える影響のマイナス側面が気になってしまいます。廃止されれば、企業も負担が減るでしょうし、家計に対しても負担が減るのですが、あくまでも直接ガソリン等の支出をしている場合に限られます。
 そして気になる点としては、直接経済に関係しませんが、高度成長期時代に作られた橋梁(きょうりょう)の寿命が一度に訪れようとしていることです。高度成長期時代は昭和30-40年代で、一般に橋梁の耐用年数は50年程度ですから、今後10年から20年程度で一気に寿命を迎えるものが出てきます。現に初期段階の橋梁はそろそろ対策が必要となっているのも事実です。これらの予算についても検討が必要となってきます。道路なんてこれ以上造ってどうするのだろうかと思うのですが、すでにある橋は結構な問題だと思うのですが。どうせ、目先の暫定税率廃止をしたところで、将来確保しなければならないのなら、目的を変更して残しておいた方が、将来増税で問題になる必要もないでしょう。
 とりあえず、租税特別措置法自体は延長して、道路特定財源から一般財源に変更し、消費税率を抑える方が経済に対して与えるマイナス要因は排除できると思います。道路特定財源の暫定税率廃止より、消費税増税の方が消費に与える影響は大きく、それこそ国内経済に打撃を与える事態となるのではないでしょうか。